この記事は、サラリーマン大家さんが上手に節税するための解説マニュアルです。

本記事では不動産投資調査の#REIBOXが「サラリーマン大家さんが適切に効果的な節税を行うポイント」「節税対策が本業の会社にバレにくくする方法」について解説します。

サラリーマン大家が上手に節税する為に理解したおきたい5つの考え方・手順

  1. 「損益通算」という考え方を理解する
  2. 「減価償却費」の仕組みを理解する
  3. 経費として使える範囲を理解する
  4. 青色申告をする
  5. キャッシュを増やしながら節税をする

1.「損益通算」という考え方を理解する

サラリーマンの節税は賃料収入よりも必要経費が多くなり(※)不動産所得がマイナスになった場合に、プラスである給与所得から不動産所得の赤字分を差し引ける「損益通算」という仕組みにより実現します。

【例】年収800万円のサラリーマンAさんの場合

初年度に賃料10万円のマンションを物件価格1000万円で購入。家賃収入は120万円だが物件価格が1000万円なので差額で-880万円が計上されます。

年収800万円に対して不動産所得としては-880万円、差額の80万円が給与所得から不動産所得の赤字分を差し引ける損益通算となります。

不動産所得の赤字分だけ所得が少なるため、最終的な納税額は年末調整時の源泉徴収額より低くなります。既に年末調整時に多く払っているため、確定申告をすることで『差額が還付』されて『節税』できた、ということになります。

2.「減価償却費」の仕組みを理解する

減価償却(減価償却費)は不動産投資開始時にかかった物件購入費(建物代)を一定の時間軸(=耐用年数)で必要経費として差し引いていく仕組みです。

減価償却費の例1

●耐用年数22年、2,200万円の投資用物件を購入した場合

・物件購入費(建物代)=2,200万円
・一定の時間軸(耐用年数)=22年

2200万円÷22(年)=100万円
100万円が必要経費として計上できる『減価償却費』となります。

減価償却費の例2

●新築ワンルームマンション(RC造:定額法47年・償却率0.022)を購入した場合

・2,800万円の内訳(土地4:建物6、の場合)
・土地:1,120万円、建物:1,680万円

減価償却費:年間36.96万円(償却できるのは建物の取得費用1,680万円に対してのみ)

経理上、実際にかかった必要経費に加えて減価償却費分が計上されるため、税金計算上赤字になることもあります。また、上記の「減価償却費の例1」を元に考えると、実際のお金の流れとして考えると100万円の現金支出をしていない分、現金が増えることになります。

22年の減価償却期間が終われば建物購入費が消えます。物件購入費を気にしない家賃収入から定期的な修繕費を差し引いた金額が手元に入ってくるので、このタイミングでキャッシュフローは向上します。大きな額を狙いたいなら減価償却期間が終わったタイミングで売却してキャピタルゲインを狙っても良いでしょう。

3.経費として使える範囲を理解する

あらゆる出費が経費になるわけではないので、経費対象を理解しておかないと無駄に支出がかかり節税効果がないばかりか赤字経営となります。そのため、「経費対象になるか?の判断基準」を抑えておきましょう。

経費対象になるか?の判断基準

「不動産事業に関係する費用、且つ証明や説明ができるもの」に限って経費対象とお考え下さい。また、適切に節税するのであれば記録をきちんとつけておきましょう。物件視察に行った場合でも現地で見て来たという記録を残しておけば、仮に税務調査が入ったとしても経費として認めてもらえます。

経費の具体例

入居者募集の広告費、清掃費、修繕・リフォーム費用、他の大家さんとの交際費、不動産投資や経営に関する書籍費、物件を視察する際などのガソリン代や交通費など

注意すべき経費例

・交際費、ガソリン代、交通費

完全NGということではないのですが、不動産事業で使った経費なのか?私生活での経費なのか?という証明が難しいです。(証明が出来るなら経費として計上できる)例えば旅行のついでに物件を見に行った場合に発生した交通費や食事代は経費にはなりません。

・家族で飲食・家族旅行の費用

交際費で落とせません。また、家族旅行を福利厚生費として経費計上することも出来ません。法人ですら認められていないため、個人の場合は尚更です。

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REIBOX編集部
経費として計上する場合、主観的な判断では無くしましょう。客観的に見て、『不動産事業に関係がある』と誰もが納得できるものだけを経費としてください。
税金
固定資産税、都市計画税、不動産を購入したときの不動産取得税、収入印紙代などの税金
保険料
不動産投資の際に必須となる火災保険への加入、他にも地震保険も該当
管理会社への業務委託料
大家さんの一般論として賃貸物件は不動産管理会社に実務(家賃の徴収や住民トラブルの対応など)を委託しますので、委託費用(家賃の5%が相場)は経費に該当
税理士や司法書士への報酬
確定申告を税理士事務所に依頼する、不動産の登記を司法書士に依頼する、などで発生する費用は経費に該当
減価償却費
「2.「減価償却費」の仕組みを理解する」で解説した減価償却費も経費に該当。建物は構造や素材によって耐用年数が設定されているため(木造は22年、鉄骨造は34年、マンションで多いRC造は47年)、購入物件費用を耐用年数で割った金額が減価償却費として費用に計上できます
ローン金利
不動産投資ローンによる融資を受けて物件を購入した場合、月々の返済額の一部は元本ではなく金利です。建物を取得するために受けた借入金の金利は経費に該当します。また、ローンの融資を受けた年の手数料も経費として計上できます。
修繕費
部屋の機能を回復(原状復帰)されるための費用は修繕費として経費に該当。部屋のクリーニング代、壁紙の交換、給湯器・エアコンの交換、など。マンションを所有している場合、管理費として共用部分のメンテナンス費、大規模修繕に備えて毎月支払う修繕積立金、も経費に該当
その他
物件を視察にいった際の交通費、税金に関する本を購入した際の書籍代、不動産屋への手土産代、などは常識の範囲内で経費として計上が可能(あまりに交通費や交際費の頻度が高く、金額も多い場合は税務署のチェックが入ります。)
参考1|ローン金利の確認方法

融資を受けた金融機関から年末に返済表が送られてきます。返済表にはそれぞれ返済金額の借入金と金利の内訳が書いてあり、その内の建物を取得するために受けた借入金の金利が経費として計上できます。

参考2|修繕費の定義

修繕費は元の状態に復帰させるための費用が該当します。そのため、元よりも機能を向上させるための設備の費用に関しては修繕費として一括経費計上が出来ません。

(例)

・階段の修理 → 修繕費
・階段を新たにつける → 修繕費ではない(機能の向上のため)

・壁紙や床板の張替え → 修繕費
・間取りの変更 → 修繕費ではない(機能の向上のため)

4.青色申告をする

個人で不動産投資を始める場合、最初は当然ながら「白色申告」になっているため『青色申告』の承認申請手続きを行う必要があります。

手続きの〆切は青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで。ただし、その年の1月16日以後に、新たに事業を開始したり、不動産の貸付けをしたりした場合は、その事業開始などの日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内に提出する必要があります。

よく間違えやすいのですが、確定申告の翌年の3月ではありません!

2020年の5月に初めて不動産物件を購入した人は2ヶ月以内ですから7月までに申請を出せば良いです。ところが今までワンルームマンションを買っていた方が青色申告をする場合、3月15日までに出しておかないと青色申告できません。

こういった申告は収益物件を持つ前から実行できますので、これから始める方は忘れないようにあらかじめ申請を出して置くと安心です。

お金や税金に関わる話は専門家に相談

どの様な場合でも不動産投資で節税の仕組みを作るには税理士の相談を後回しにせず、最初から相談するのが良いです。投資用物件を購入する前の対応で不動産投資の節税は半分以上決まってしまうとお考え下さい。また、経費の計上も大切ですが、それ以上に効果の大きい節税対策を取り組んでもらえればと思います。

5.キャッシュを増やしながら節税をする

キャッシュを増やす方法は3つしかありません。

  1. 収入を上げる
  2. 支出を減らす
  3. 税金を抑える

節税を目指しながらも税金を抑える事しか注目せず、実質のキャッシュを減らしている方が後を絶ちません。収入を上げる・支出を減らすを前提として「税金を抑える」も成立させるのが本当の節税対策ということです。

会社に不動産投資の節税対策がバレないようにする方法

  • 唯一出来る対策は普通徴収
  • 住民税から足が出る可能性があるので完ぺきな対策は無い

A,唯一出来る対策は普通徴収

確定申告の時に、住民税の納付方法について「自分で納付する」にチェックを入れ、不動産所得で得た収入に対する住民税を6月、8月、10月、翌年の1月に自分で住民税を納めます。

B,住民税から足が出る可能性があるので完ぺきな対策は無い

不動産投資は減価償却や支払い利息などで大きな金額が経費として計上されるため、帳簿上赤字になることが多くなります。加えて、新しい物件を購入した際は巨額の一時費用が掛かるために帳簿赤字になるのはよくあることです。赤字で申告した場合、「住民税」は還付制度が無いため税務署と勤務先が連携をとり【適切な金額を特別徴収する】流れになります。

そのため、勤務先からすると『この従業員の住民税はどうしてこんなに安いのだろうか?』となるのでバレる可能性が発生します。

バレた際は各会社の規約の厳しさによって対応が異なると思いますが、そもそも副業禁止の規定にマンション投資はNGと書かれていないことも有ります。また、人によっては「家族の遺産を相続した関係で物件を譲り受けて~、」ということも有るので神経質になり過ぎない方が良いでしょう。

【重要】節税の危険な側面もあらかじめ理解しておこう

  • 過度な節税に注意!
  • 重加算税に注意!
  • 裏付けのない税務知識には注意!
  • 必ず早期から税理士に相談すること!

不動産投資で節税できているということは赤字が出ている状態、もしくは不動産投資の赤字分を本業の給与など他の収入で埋め合わせている状態と言えます。

特に投資の初期段階は満室になるまで時間が掛かるために賃料収入が少なかったり、減価償却費以外にも借入利息など様々な経費が多くなったりして赤字になりやすいものです。

赤字状態が中長期的に続くと手出しが必要となるので、あらかじめ自己資金を用意しておかなければ不動産投資が破たんします。

✅ 過度な節税に注意!

行き過ぎた節税対策は税務署からのお尋ね・税務調査などのトラブルの原因となります。常識的に考えて「おかしい」「過剰すぎる」と思われる節税には税務調査が入る可能性が高くなります。

『○○年に1度は税務調査が入るよ』などと言われますが実際はケースバイケース。明らかにおかしな節税対策を行っていると税務調査が入ってくる、と考えた方が適切です。

✅ 重加算税に注意!

税務調査で「悪質」と認定されてしまうと重加算税を取られます。4割増しで税金を払うことになり思わぬ損失を被るので、こうなると節税どころではありません。重加算税は法律上では7年分まで遡れますが、悪質でないなら3年分は遡ってきます。

なお、余程悪質なことを行っていない限りは過少申告加算税(計上ミスや勘違い)になることが多く、50万円までは10%、それ以上は15%増し(一般的には)で払います。そして、納税期限を過ぎた日数分の利息を支払います。

✅ 裏付けのない税務知識には注意!

知り合いのマンションオーナーから『・・・を経費にしたけど何も指摘されなかった』等の話を受け、鵜呑みにしてしまうことがないように注意!取り入れた自分には税務調査が入ってしまった!という事例は後を絶ちません。

✅ 必ず早期から税理士に相談すること!

税理士への相談は早ければ早い程良いです。2020年1月に購入した物件を翌年2021年3月のギリギリになって相談してもほぼ対応できません。節税の選択肢を増やすためにも税理士へは早期の相談を心がけましょう。

入後直ぐがベスト、購入後3ヶ月過ぎたらマズいと思ってください。

不動産投資は節税よりも長期的な安定収入を得ることを第一に取り組もう

不動産投資の本来の目的は節税ではなく長期間安定的に収入を得ることです。節税を不動産投資の目的にしてはいけません。節税はあくまでも不動産投資の一環として一時的に恩恵を得られるものにすぎません。赤字を出して節税をすることより、賃貸経営を黒字化して収入を安定させることに注力することを忘れないでください。