日銀の黒田総裁が異例の発言を行い、経済市場は大きく動きました。具体的には「日銀が国債を大量に購入する」という内容ですが、ではその結果として不動産投資にはどのような影響が考えられるのでしょうか?

本記事では細かいことは一旦抜きにして大枠としての動き・今後の展望について解説します。

金融市場から国債買い入れで5000億円供給

金融市場のチャート
市場へ介入した日銀

今朝(2020年3月2日)、コロナショックの影響で下がってきた株価の歯止めをかけるべく黒田総裁が『金融市場から2週間の期限つきで国債買い入れで5000億円供給』と発言しました。

日銀が金融市場の混乱に総裁談話を出すのは異例の事態なので、昨今の株価低迷は大きな影響を与えていることが伺えます。

日銀が国債を買い入れて市場にお金を供給するとどうなる?

日銀が市場にお金を投下することを金融緩和政策などと言われますが、国債を購入すると国債の価値が上がるので保有している人は利益が出ます。

得た利益で更に他の投資をしたり、他の商品を買ったりすれば経済は循環するので、市場にお金を投下することで世の中にお金が出回るようにしたい。(景気良くしたい!)という狙いがあります。

日銀、黒田さんの狙いは成功した?

貨幣流通量の増加はそれによってモノの相対的な価値が上がるため、将来的にはインフレになるという予想が世の中に広がります。インフレになると円というお金の価値が下がるので『円安』になる可能性があります。

今日の緊急発言はここ最近の急激な円高への歯止めをかけることを狙いとしている短期的な施策と考えられます。実際問題として約107.40円だったものが約108.30円まで急激に変化したので円安となり狙いどおりの動きになったとも言えます。

ただし、あくまでも一時的な急場しのぎの対策と言えるため完全に円高を脱したとはいえません。(その後107円台に再度下落しています。)今後の値動きを眺める必要があります。

不動産投資に対する影響は?

今回はあくまで「2週間の期限つき」としているので限定的な措置と考えるのが妥当。そのため、急激に何かしらの影響が不動産投資業界に降りかかってくることは考えにくいでしょう。

仮にインフレが起きたとしても現物資産である不動産はインフレに強い投資。インフレになったからと言って家賃が急騰するわけでもなく、安定的な投資として活躍してくれます。

少し広義の目で経済状況を見てみよう

オリンピックと経済の関係
オリンピックが日本経済に与える影響は大きい

現在はコロナショックで日本のみならず世界経済が不安な状況になっています。加えて、国内だけで見るとコロナの影響でオリンピックすら危うい状況になってきています。(無事に開催して欲しいです!)

東京都の五輪経済効果試算によると、東京オリンピック2020大会開催に伴う経済波及効果(生産誘発額)は、東京都で約20兆円、全国で約32兆円と試算されています。(分析対象期間は2013年(招致決定年)から2030年(大会10年後)まで)

万が一、コロナショックの余波でオリンピック開催まで悪影響が出るのであれば極論ですが約32兆円が吹き飛ぶ!ことになり、日本経済に与える影響は甚大です。不況への足がかりとなることが懸念されます。

不況が加速した場合、不動産投資はどうなるのか?

不動産投資は株式・投資信託・レバレッジをかけるFX投資等と比べて急な株価の変動によって資産がゼロになることも有りません。加えて、不況になったからと言って「月10万円の家賃を来月から月5万円にしてください」といったことも有りません。

価格変動が緩やかな投資であるため、安定した収入を得ることが出来るのが投資としての魅力の1つ。つまり、不況時における投資の選択肢としては有力と言えます。

初心者と経験者でスタンスが異なる

ただし、上記の内容は既に不動産を保有している方に当てはまる内容であり『これから不動産投資を始めるぞ!』という方にとっては状況が異なります。

既に保有している人は「安定した収入」を得ますが、初めての方は『まずは物件を購入する』ことから検討・設計する必要があるためお金の流れも考え方も異なります。

注意

よくありがちな不動産投資業者の情報では『マンションを持っていれば安心だよ(持っていること前提)』という体の情報しか伝えていないことが多いので誤解しやすい点と言えます。

これから不動産投資を検討する方が抑えておくべきポイント

部屋

✅ ファンダメンタル要因を読み解く

オリンピックの終了、日本の人口減少・少子化、など景気が大きく回復するための大枠のポジティブ要因は現状では見当たりません。総務省も「全国の将来人口推計結果の概要」において【 2065年には日本の人口は8,213万人~9,490万人にまで減少するだろう 】というデータを公表しています。

一見すると八方ふさがりな状況に見えるようですが、より詳細に要因を読み解くと以下の特徴を見つけることが出来ます。

  • 外国人の人口が2013年以降連続で増加傾向
  • 2025年、大阪万博の開催が決定(※1)
  • 2027年を開通目標に、品川-名古屋間でリニア中央新幹線の工事が進行中(※1)
  • 東京は人口の変動が少なく、且つ家族世帯が減少し、単身者世帯が増加する(※2)
参考|※1

大規模イベントを控えている・大規模インフラ整備が進められている、といった地域では人口流入が起きる可能性があります。そのため、その地域の不動産需要が高まることで不動産市場が活性化する可能性が生まれます。なお、リニア中央新幹線は、その後大阪まで開業する予定です。

参考|※2

2019年3月に東京都が発表した「東京都世帯数の予測」を参考

ファンダメンタル要因から賃貸需要が期待できる場所を厳選することで不動産投資に勝機を見出すことが可能です。都内なら単身者向けのワンルームを中心に検討。外国人入居者も可能な物件を用意する、大型イベント・インフラが発生する地域を中心に物件エリア選定を行う、など。

全国一律で良い・悪いと判断するのではなく、エリアマーケティング的発想で需要の見込めるポイントを探すのが今の不動産投資としての立ち回りと言えます。

✅ 不動産価格が下落する可能性

不況になると株価ほどの下落率ではないにせよ不動産価格は下落します。(ただし、家賃が大きく下落することはありません。)投資マンションは単価が高いため価格の下落は購入検討者にとってチャンスと言えます。

✅ 現金を少しでも多く用意しよう

融資環境が大きく緩和されるような期待が持てる要因が少ないので、基本的に融資はシビアな状況と考えるべき。そのため、現金を少しでも多く用意しておいた方が不動産投資を始めやすい環境と言えます。融資の貸し渋りが行われる中、物件価格が下がるために現金を保有している人が多くの選択肢を得ることが可能になります。

融資してもらう方法として

融資は個人で金融機関に相談をするよりも不動産投資会社を経由して提携先の金融機関にアプローチした方が柔軟な相談に乗ってくれることがあります。(「○○会社さん経由の物件だから融資の相談に乗りましょう」といったイメージです。)現金を多く用意しつつも不動産投資会社とのパイプ作りを並行しておくことで融資対策活動も行っておきましょう。

まとめ

今回の日銀が国債を大量に購入したことによる不動産投資への直近の影響は少ないと考えられます。ただし、円高を懸念しており円安方向に進めていこうという狙いは根底に見えるためインフレ寄りの動きを進めていく思惑はみて取れます。

インフレになることで現物資産の方が価値が上がるために不動産投資は推奨したいのはもちろんですが、それ以上にお金(紙幣)の価値が下がることに注意しておくべきです。(タンス預金・銀行預金などのお金の価値が実質は目減りしていることになるため)

お金の金額もそうですがそれ以上に「価値」という考え方が資産運用においてキーポイントとなります。価値のあるモノを保有し、価値の少ないものは損切る・別の価値に転嫁する、などを行いご自身の資産価値を高める投資活動を心がけてみてくださいね。