どのタイミングで法人化するのが最適なのか?

不動産投資では法人化すべきなのか?と悩む局面が1度は出てきます。そこで本記事では「どのタイミングで法人化すべきか?」「法人化する方法は?」「法人化しても良いのか?メリット・デメリットは?」についてお伝えします。

不動産投資で法人化する方法

法人設立時に必要な費用

  • 新設法人の登記費用:約30万
  • 1年間の税理士費用(顧問・決算申告):約40万程度

例えば登記費用は知り合いの司法書士を紹介してもらったら紹介割引でもう少し安くなることもありますし、1年間の費用もお願いする内容によってはもっと安くなることもあります。そのため、おおよその目安として「約」をつけています。

[内訳]
定款認証用収入印紙代(電子認証の際は不要)・定款認証時の公証人の手数料・定款の謄本の登記手数料・登録免許税・会社印の作成費用、など。

また、上記に加え「資本金」の準備が必要になります。資本金は1円からでOKです。時間にして約1、2週間ほどかかります。

申し込み方法

法人登記は司法書士が専門家であるため、登記手続きの代理ができるのは司法書士だけです。ですが、税理士が司法書士と連携しており税理士にお願いして始めた(実際の業務は提携先の司法書士に依頼している)、というケースも多くあります。

サラリーマン・公務員でも法人化は可能

サラリーマンや公務員でも法人化は可能です。公務員は副業NGですが配偶者や親族を表取締役として本人は出資者となることで回避できます。サラリーマンでも同様です。なお、サラリーマンの場合、副業解禁の動きに合わせてサラリーマンをしながらご自身が法人を持つこともOKというケースもあります。

不動産投資で法人化するタイミング

理想は最初から

個人で不動産を取得し、後に法人に移すと資産移転として不動産取得税・登記費用がかかります。最初から法人にしておけばこれらの支払いが1回で済みます。

個人より法人の税率が低くなるタイミングから

最初から法人化することに負担に感じる方は「個人と法人の税率」を踏まえ、個人より法人の税率が低くなるタイミングで法人化しましょう。現在の税率で考えると「法人の実効税率が30%後半」「個人の課税所得が1800万を超えてくると所得税が40%」。そのため、個人の課税所得が1800万を超えてくると法人を設立した方が税金が安くなります。しかし、この計算は表面上の税率であって、控除など全ての条件を加味すると法人が実際に負担する税率はさらに低くなります。詳しくは後述する「所得税を大きく減らせる・節税対策」をご参照ください。

中小企業法人の税率に優遇される

ただし、賃貸事業のような不動産経営の場合、多くが中小企業(資本金1億以下等)の扱いとなり、その場合の法人の実効税率は所得が800万以下であれば21%~25%程度となります。(中小企業の法人は優遇されているので税率が低い)

一方、個人は(全て不動産貸付業として考えた場合)所得税と住民税を合わせた実効税率が課税所得が330万超になると27%を超えます。つまり、課税所得が330万超になれば、法人の方が課税水準としては安くなる可能性があります。

よって、個人で課税所得が330万というと給与収入が約500~600万の間ほど。つまり、サラリーマンとして年収500~600万の方であれば法人を設立して不動産投資を行っていった方がお得になる可能性があるわけです。

ワンポイント
厳密に計算する場合、給与所得と不動産所得のバランスにもよるため、一度ご自身、または税理士に相談してシミュレートしてから「どのタイミングが得か?」を見極めた方が確実です。

相続対策

個人から法人へ建物等の財産を移すことで「相続税の低減」「贈与税を支払わずに相続人への財産移転」が可能になります。また、法人として土地を所有している場合、個人が所有しているよりも相続税評価額を低くすることもできます。そのため、相続対策として法人化する方もいます。

不動産投資で法人化することのメリット

収支が見やすい

個人の場合、サラリーマン給与に加え副収入として家賃収入が加わると「自分の所得が増えた」と勘違いして家賃収入に手を付けてしまいます。ですが、サラリーマン所得と不動産業による所得は切り分けなければ物件の維持・返済が出来ずに残念な結果になります。法人化することで個人と法人(不動産業)が切り離されるため、管理がしやすくなります。

認められる経費が多い

法人化すれば個人よりも「認められる経費の範囲」が増えます。経費の領域が増える分、節税対策になります。なお、法人化した際に認められる経費について詳しくは「不動産投資で法人化する方法とタイミングは?設立のメリット・デメリット解説」をご参考になさってください。

所得税を大きく減らせる・節税対策

個人より法人の税率が低くなるタイミングから」や「相続対策」でもお伝えしたように、法人にすることで個人で不動産収入を得ている場合よりも税金が安くなることがあり、法人化する決め手が税金で損をしないため(節税対策)という方は多くいます。

特に影響が大きく、顕著に影響が見えるのが所得税です。

[個人の税金(所得税)]

課税所得金額税率控除額
195万円以下5%
195万円超~330万円以下10%97,500円
330万円超~695万円以下20%427,500円
695万円超~900万円以下23%636,000円
900万円超~1800万円以下>33%1,536,000円
1800万円超~4000万円以下40%2,796,000円
4000万円超45%4,796,000円

個人の場合、所得に応じて税率が上がります。(実際には「課税所得×税率」から控除額を差し引いたものを税金として納めます。)そのため、所得が増えれば増えるほどに所得税が大きくのしかかってきます。

[法人の税金(法人税)]

課税所得金額税率
~400万円以下約26%
400万円超~800万円以下約28%
800万円超約34%

法人の場合、控除がない代わりに所得が800万円を超えるとどれだけ稼いでも税率を一定に抑ることができます。

目安は900~1000万円

個人としての不動産所得が900~1000万円を超えたら税率が逆転する(法人の方が節税できる)ので法人化を考えるタイミングとなります。

税金免除期間延長

税金免除期間延長とはその期に赤字が発生すると数年間にわたって、その赤字を利益から差し引いて申告することが出来ます。例えば物件購入のため、などの理由で大きな赤字が出た場合、数年の間は利益と相殺することが出来るので税金を払わないで良い期間が出てくるのです。

個人の場合、赤字の繰越の期間は3年ですが、法人の場合、赤字の繰越の期間は9年となります。

譲渡税

法人の場合、物件を取得して5年以内で譲渡すると、譲渡時にかかる税金が個人事業主よりも安くなります。ただし、5年を超えて保有した後に売却すると、個人事業主には税金の優遇制度があるため法人よりも税率が低くなります。そのため、5年以内の短期で物件売買を繰り返す事業を行っているのであれば法人化することにメリットがあります。

会社員が法人化するメリット

(1)節税

会社員は個人なので「所得税を大きく減らせる・節税対策」でもお伝えしたように『個人所得が増えれば増えるほどに税率が上がります(累進課税方式)。よって、所得が900~1000万円ほどになったタイミングで法人化した方が節税できます。

(2)本気で数億円規模を目指す

個人よりも法人で収益物件を購入していったほうが不動産賃貸を事業として行っていると金融機関からみなされやすくなるので、のちのち融資が受けやすくなります。不動産投資で実績を積み、その実績をもとに法人で事業性融資のプロパーローンを受けるには『法人での黒字の決算書が3期分必要』なことが多いので、「数億円規模をめざすぞ!」という方であればあるほど、会社員とはいえ早くに法人化させておいた方が展開しやすくなります。

入居者からの信用度

絶対的な数値で表すものではありませんが、入居者目線で考えても物件の所有者が「個人」よりも「会社(法人)」であるほうが『しっかりしている』と信用されやすいと考えられます。

不動産投資で法人化することのデメリット

設立費用

不動産投資で法人化する方法」でもお伝えしたように資本金に加え、設立費用(司法書士)とランニングコスト(税理士)を払う必要があります。

法人としての住民税

法人としての住民税も加わります。「法人都道府県民税」「法人市民税」などの名目で年に1回支払う必要があります。また、仮に赤字でも「均等割」といって中小企業(資本金1,000万円以下)であれば赤字でも7万円の法人住民税がかかります。

法人のお金と個人のお金は別換算

法人の場合、売上から経費を引き納税後の手取りは法人の剰余金となり内部留保となります。ご自身が社長であっても法人のお金を勝手に使うと業務上横領となり犯罪行為となるため、会社のお金を使う場合は「役員報酬」を設定した上で手にする必要がありますが、役員報酬は年に一度しか改定できないため、調整しにくいというデメリットもあります。

税務署の調査率が高い

所得税や法人税の申告をすると、申告内容について税務調査が行われることがありますが、黒字であるほど調査の頻度が多く、個人事業主であれば7~10年に一度である一方、法人であれば3~5年に一度調査が行われる傾向にあるので、法人の方が税務調査の頻度が高いといえます。

社会保険の加入

一人社長の会社でも役員報酬を払うと強制的に社会保険の加入となります。支払った役員報酬の約30%(会社と役員で折半)が社会保険料となるので大きな負担になります。役員報酬を設ける場合は社会保険の負担額も踏まえたうえで節税効果があるか?を検討してください。

まとめ

法人化は節税面でのメリットが増える一方で、ノーリスクというわけではありません。どれくらいの規模を目指すのか?ご自身のゴールは?法人化する目的は?などの兼ね合いから、必要に応じて法人化する・しないを考えていきましょう。